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創業70周年。自分たちが「いい」と思ったものを信じ、道なきところに道をつくりたい

2023.02.07

目次

2023年2月11日、IKEUCHI ORGANICは創業70周年を迎えることができます。

創業者である父から会社を引き継いだのが1983年。タオルづくりに40年携わってきましたが、「まだまだこれから」という意欲に満ちています。

ものづくりについて考える際、ぼくの心の軸にあるのは、中学3年生の時から続くビートルズ愛です。1964年2月7日、彼らがアメリカに初上陸した際のケネデイ空港の大狂乱をニュース映像で見た瞬間から、彼らの存在はぼくの身体の一部になりました。

彼らの音楽は、常に今まで聴いたことのない斬新な音作り、しかも気をてらうことがない。ロックンロール・電子音楽・クラシック・民族音楽など、様々なジャンルの音楽を高次元に融合させ、現在のロックやポップスの潮流を創っています。楽曲のためには機材や録音システムまでつくり、彼らの活動は挑戦の歴史そのものです。新アルバムが届くたびに、常に斬新なビートルズである事に身体が震えた6年を共に過ごせた日々は人生の宝です。

自分が「いい」と思ったものを信じて、道なきところに道をつくっていきたい、Long and Winding Road。ビートルズが与えてくれたような驚きや感動をお客様に届けていきたい。ビートルズには遠く及びませんが、こうした想いが常に自分の中に存在します。

そもそも、当社の70年の歴史を振り返ると、道なきところに道をつくる挑戦の連続でした。

1953年2月11日、輸出を専業とする工場として池内タオル工場は創立しました。最初はイランなどの中東の産油国が主な輸出先で、技術を磨きながら、次第にヨーロッパ市場へと移り、遂には当時タオルの中心地ドイツでハイエンドユーザー向けのタオルとなりました。

当時、今治でも輸出専業の会社は異例です。そんな時代、海外にチャンスありと、創業者である父は海外へ乗り込んで行ったのです。また、自分を育ててくれた会社と国内市場の奪い合いをしたくないという考えもあったのでしょう。

そして、創業20周年を迎えた1973年、ヨーロッパにおいて確固たる地位を築くために大規模な投資を行います。まだ試作機が出来ていない『TOYODA8』を設計図の段階で24台も発注し新工場を建設することを決めたのです。現在で考えると、何十億円もだして、工場をゼロから新設するだけでなく、規模を3倍に増やすようなもの。ぼくもよく「向こう見ず」「新もの食い」と言われますし、自覚もしていますが、こんな勇気はまるでありません。

今でも覚えているのが、1975年のぼくの結婚式です。当時、ぼくは大阪で働いていたのですが、父から頼まれて、今治で結婚式を挙げることにしました。父は今治のタオル業界で顔が広く、ぼくら夫婦の友達以外は全て今治のタオル会社の方々で、150社くらいから参加いただいたと思います。

驚いたのが、引き出物にタオルも渡すと父が言い出したことです。タオル屋さんにタオルを渡すなんて冗談じゃないかと思いましたが、その時に渡したのがこの『TOYODA 8』で織ったタオルです。こうした高密度の織やシャーリングされたタオルが先進国のヨーロッパの新しい潮流だと伝えたかったのだと思います。

世の中上手くは行かないもので、20周年工場設立と機を同じくして起きたオイルショックの影響で急激な円高が進み、輸出専業から国内市場への転換も余儀なくされました。ただ、自分たちが「いい」と思ったものを信じて、道なきところに道をつくっていく姿勢は、当社の精神に根付いていったと感じます。

先代からバトンを受け取った後の40年間も、環境に配慮したものづくりをいち早くはじめたり、自社ブランドで勝負していくことを決断したり、IKEUCHI ORGANICに社名もブランド名もリニューアルしたりと、自分たちが信じた道を突き進んできました。

ありがたいことに、ぼくらの姿勢に共感してくださるお客様との出会いが新たなステップに導いてくれています。お客様からの応援の声を聴くたびに、「もっといいものを作りたい」という気持ちが高まります。内から湧き出る衝動と、背中を押してくれる応援の声。その両輪が、ぼくらのものづくりへの情熱を支えているのです。

ぼくの頭の中には、IKEUCHI ORGANICのブランドの航海図がかなり緻密に描かれていて、最終的に辿り着きたいものづくりのイメージがあります。そこに辿り着くには紆余曲折あって、まっすぐな道が続いているはずもありませんが、皆様の支えと職人たちが創り上げる技術が融合して、2073年には赤ちゃんが食べられるタオルが出来上がるはずです。

「試作品の一枚はなんとか作れても、多くのお客様に使ってもらうための生産は到底無理」と職人からよく言われます。でも、「一枚は織れたのだから、工夫に工夫を重ねればなんとかなる。実現できないはずはない」と励ましながら、みんなで努力を続けています。それを象徴するようなタオルも70周年モデルの一つに控えています。

当社の原点である、海外展開にも更に力を入れていきたいと考えています。

振り返ると、2002年にニューヨークで開催されたホームテキスタイルショーで、「ベスト・ニュープロダクト・アワード」を日本企業として初受賞したことが大きな転換点でした。自社ブランドの知名度が国内外で一気に高まったことに加え、自分たち自身も自社ブランドに大きな自信を持つことができました。

IKEUCHI ORGANICでは世界で活躍するアスリートを応援する「タオルサポートプログラム」を行っていますが、ぼくら自身も世界を相手に勝負していきます。日本の技術や文化の水準の高さの結晶である高品質なタオルもまた、世界をリードする時代が来ると信じています。

私達の前にいるお客様はもちろん、まだ見ぬ世界中の人たちを感動させる気概をもって、日々、ものづくりをしていかなくてならないと感じています。

最後になりますが、今年は創業70周年ということで、様々な企画を実施する予定です。『今治オープンハウス』などのリアルイベントの再開、次代を担う新シリーズの提案、当社の歴史において重要な存在だった商品のオーガニックによるリメイクなど、IKEUCHI ORGANICの「これまで」と「これから」を感じていただけるような企画を考えています。

これからも、応援してくださる方々に感動と愛を届けたい。そんな想いでいっぱいです。IKEUCHI ORGANICのこれからに、どうぞご期待ください。

池内 計司

記事を書いた人

池内 計司

IKEUCHI ORGANIC 代表。一橋大学商学部を卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。1983年、家業である池内タオルに入社し、2代目として代表取締役社長に就任。現在は代表として企画開発部門に従事。