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ナガオカケンメイさんなくして、IKEUCHI ORGANICなし。 “ふたりの父”が語る誕生秘話 【東京ストア5周年イベントレポート】

2019.05.24

目次

IKEUCHI ORGANICには、ふたりのお父さんがいます。

ひとりは、池内代表。そして、もうひとりは「ロングライフデザイン」を掲げるD&DEPARTMENT代表のナガオカケンメイさん

さかのぼること5年前。2014年3月1日に『池内タオル』は『IKEUCHI ORGANIC』へと生まれ変わります。

「IKEUCHI ORGANIC」というネーミングをはじめ、イケウチのシンボルともいえるロゴやコーポレートカラー、いわゆる「CI(コーポレート アイデンティティ)」をデザインしてくれたのがナガオカさんです。

同年3月18日に、イケウチは今治以外で初めてとなる直営店の東京ストアをオープンしますが、その店舗デザインもナガオカさんに監修いただきました。

いわば、ナガオカさんなくして、IKEUCHI ORGANICはなし。

そこで、東京ストア5周年を記念し、改めて原点を振り返るべく、ナガオカさんと池内代表のトークショーを2019年3月6日に行いました。そのダイジェストをお届けします。

ナガオカさんとイケウチの出会い。

ーー はじめに、ナガオカさんの自己紹介をお願いします。

ナガオカさん:
僕は、デザイナーとして18歳の時から全力で走ってきましたが、30歳にさしかかった時に、当時のデザインに対して疑問が浮かびました。「正しいデザインとは、何か?」を確かめたくなり、つくったお店が『D&DEPARTMENT』です。

ナガオカさん:
この店に並べる商品の選定基準は、「ロングライフデザイン」であることです。

時が証明した息の長いデザインは正しいものだと考え、商品誕生から20年以上経った商品を中心に定価で販売しています。

また、ロングライフデザインというと、新しいものを否定しているように誤解されがちなんですが、そうでありません。センスの良さとは、定番のものに、最新の流行りを組み合わせることで生まれると思っています。

新しいものを取り入れる楽しさと、変わらないものを育む健やかさの両方が、これからの時代に必要になってくると考えています。

ナガオカさん:
D&DEPARTMENT創業時の2000年頃、店で池内タオルを扱いたいと思ったことが始まりです。

普通のタオルは店頭に並んでいる時が一番良い状態で、その手触りに感動してタオルを買っていくんだけど、洗濯するとちょっと変わってしまう。

一方、池内さんのタオルは店頭に素のままで置いてあって、初対面の時の印象は正直パッとしない。でも、使い込んでいけばいくほど、どんどん状態がよくなっていく。

タオルの質はもちろん、タオルを売る時の姿勢が素晴らしいと思いました。

ーー 池内代表と初めてお会いしたのは、いつ頃ですか?

ナガオカさん:
D&DEPARTMENTで取扱を始めてからしばらく経った頃だったと思います。

愛媛県に仕事で行く用事があったから、会いたいと思って連絡しました。そうしたらすぐに「迎えに行くから一緒に飲みましょう」と言ってくれて、2軒くらいハシゴしました。ものすごい酔っ払って、何を話したのかは覚えていないです(笑)。

池内さんは、D&DEPARTMENTが池内タオルを創業当時から取り扱っていることを知ってくれていました。意気投合して、以後プライベートでも親しく付き合うようになりました。

これからの60年のため、ブランドを見直す。

ーー 2014年の「IKEUCHI ORGANIC」へのブランディングは、どういう経緯で始まったんでしょうか?

池内代表:
前年の2013年に、僕からナガオカさんにオファーをしたのが始まりです。

当初は会社名までは変えるつもりはなくて、自社ブランドのブランディングをしっかりやりたいと考えていました。

当時、自社ブランドは「IKT」という名前でした。でも、お客様からは「風で織るタオル」と呼ばれている。そして、会社名は「池内タオル」。いろんな名称があって、ややこしい。しかも、商品に込めている想いや背景を説明するのに90分くらいの時間がかかる。これらを、すっきりとまとめたかったんです。

2013年は、ちょうど創業60周年の年。そして翌年の2014年は自社ブランドの「IKT」が生まれて15年目。そういった節目を迎えて、これからの60年のことを考えたときに、ブランドのあり方を見直そうと決めました。

ーー その相談相手をナガオカさんにした理由とは?

池内代表:
大前提として、僕の想いを全部聞いてくれる方にお願いしたいというのがあります。僕の経験上、ちゃんと聞いてくれるデザイナーって、少ないんですよ(笑)。ナガオカさんは、これまでの付き合いで、僕の話をきちんと聞いてくれそうだと思いました。

また、デザイナーにお願いした以上、そのデザイナーが作り上げたものを僕らも信じ抜かないとブランディングは上手くいきません。ナガオカさんが決めてくれたものなら、どんなものでも絶対に信じられるという確信が僕にはあったので、お願いしました。

ーー 池内代表からのオファーに、ナガオカさんはどう反応されたんですか?

ナガオカさん:
最初は断ったんです。その頃、今治は町をあげて今治タオルのブランディングにがんばっていた時期だったから、僕よりも適任がいると思って。

でも、池内さんがしつこいんですよ(笑)。お断りを2回もしたんですけど。

池内代表:
もう決めてましたからね。「そもそろ、やりたくなったでしょ?」というメールを送ったのを覚えています(笑)。

ナガオカさん:
最後は、この仕事を一過性のものにするのではなく、イケウチさんもD&DEPARTMENTの仕事をしてもらって、お互い継続した関係を築いていくことを条件に引き受けることにしました。

世界のオーガニック基準を目指して。

ーー 「IKEUCHI ORGANIC」という名前は、どこから出てきたのでしょうか?

ナガオカさん:
池内さんから話を聞いていくうちに、どうやら池内さんは、今治や日本ではなく世界を見ていて、世界基準でオーガニックのことを考えている。

石川県の輪島を牽引している漆職人で桐本さんという方がいるんですが、桐本さんがつくるものは「キリモト塗り」と呼ばれているんですよ。もう輪島塗を通り越しちゃっている。

そういうのと同じで、池内さんでやられているのは、イケウチ式オーガニックだと思いました。

僕も社名を変えるなんて思ってなかったんですが、イケウチは世界のオーガニック基準になるところを目指していると聞いて、これはブランド名だけでなく、社名にした方が良いと感じて提案しました。

ーー イケウチのシンボルともいえる「I」のロゴデザインに込めた想いについても聞かせてもらえますか?

▲写真引用元灯台もと暮らし | 【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】デザインは「やって終わり」ではない。ずっと一緒に成長していこう|D&DEPARTMENT ナガオカケンメイ

ナガオカさん:
デザインについては、すごく普通ですよね(笑)。

でも、僕は個性的すぎないロゴがいいと考えていました。なぜなら、近い将来、この会社はタオルを超えて、オーガニックに関する様々なことをやり始めるだろうと思っていたからです。実際に、衣料品やベビー用品の開発にも積極的に取り組んでますよね。

また、ロゴは、地球とか、太陽みたいなものをイメージしながら作りました。実は「I」の横棒の部分は、まっすぐのラインじゃないんです。地球の球体から割り出した「I」だから、ものすごく拡大すると円に沿ったラインになっています。

ーー 代表は、初めて見た時の印象はいかがでした?

池内代表:
前提として、僕はナガオカさんから出てきたイチオシを初めからやるつもりでしたので、デザインに関してどうこう言うつもりは全くありませんでした。

だから初めて見たときよりも、5年が経った現在の方がしっくりときています。自分で言うのもなんだけど、かっこいいと思う。「I」のマークを見ると、「あっ、イケウチ」だとわかりますし。

ーー そういえば、このタイミングでネームタグも現在のものになったんですよね。

ナガオカさん:
はい。IKEUCHI ORGANICのタオルには黄色のネームタグがついてますけど、このタグもオーガニックなんです。なので、タオルを買って、洗濯をして乾燥機に入れるとクシャっとなる。

クシャクシャになると品質が悪いんじゃないかと思われるかもしれませんが、実は世の中でオーガニックとうたっているタオルの多くは、タグの部分はオーガニックではないんです。

であれば、イケウチはタグの部分もオーガニックにしませんかと池内さんに提案してみたら、面白いからやろうということになった。クシャクシャになるのも、イケウチらしさにしようと。僕は、このストーリーが好きなんです。

池内代表:
でも、一応クシャクシャにならないように、二重構造にしているんですよ。

ナガオカさん:
いやいや、すごくクシャクシャになりますよ(苦笑)。

池内代表:
でも、シワは入らないでしょ。

ナガオカさん:
確かに、シワは入らない。池内さんのものづくりへのこだわりが見えますね(笑)。

池内計司という人物をブランドに根付かせる。

ーー 2014年3月1日に社名が「IKEUCHI ORGANIC」になり、3月18日に東京ストアがオープンしました。ナガオカさんが、東京ストアの店舗デザインを監修した時に、心がけていたことを教えてください。

ナガオカさん:
いくつかありますが、「Organic Accuracy(精密なオーガニック)」というのが一つの指針になっています。

池内さんにヒアリングをしていくと、イケウチのものづくりの姿勢は、アップルコンピューターや、池内さんの前職のTechnics(テクニクス)の精密なものづくりの姿勢に紐づいていることがわかりました。

精密さということを考えた時に、素材感だとか、清潔感だとかを保てるような質感のあるものにこだわっていきました。

ーー 什器に、商品ごとのネームプレートを置いてますが、これはあえて固定していないんですよね?

▲写真引用元灯台もと暮らし | 【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】デザインは「やって終わり」ではない。ずっと一緒に成長していこう|D&DEPARTMENT ナガオカケンメイ

ナガオカさん:
そうですね。普通はテープで固定すると思うんですけど、あえて固定していない。

だから、お客さんが触るとズレちゃうんですよ。それを直し続ける必要がある。お店のスタッフからすると、いい加減にしろって感じですよね(笑)。

でも、これもブランディングの表現のひとつとして、やっていこうと。きっと、イケウチのことが好きな人は、直して帰ってくれる。それで、自分のお店のような感覚になる。お客さんとそれくらいの距離感のあるお店であっていいんじゃないかなと。お店はお客さんのものでもある、と僕は考えているので。

ーー また、IKEUCHI ORGANICのストアというと、店内にビートルズの曲が流れているのが定番ですが、これもナガオカさんからのご提案だったんですよね?

ナガオカさん:
はい。ブランドについて考えていくと、IKEUCHI ORGANICは池内さんという個性的な人に根付かせていった方が良いと思ったんですね。

池内さんはビートルズが大好きで、奥さんに見つかると捨てられてしまうかもしれないと言って、買ってきたCDやレコードを車のトランクの中に隠していた(笑)。

ナガオカさん:
お店に池内さんが愛用しているTechnicsの音響設備を置き、池内さんが大切にしているビートルズのレコードを並べ、ビートルズの楽曲を流すことで、池内計司という人をお客さんに感じてもらえるんじゃないかと思い提案しました。

いつの日か池内さんが亡くなってしまっても、「池内さんという人がいたなぁ」とみんなが思い出せるようにしたかったんです。

自分の言葉で商品や背景にある想いを語る場でありたい。

ーー おふたりが、ストアで働くスタッフに、大切にしてほしいと伝えていることはありますか?

池内代表:
とにかく、つくり手の想いを伝えてほしいと言っています。

これはストアスタッフだけの話だけではなく、会社全体でやっていかないといけない。だから、僕も様々な場所でしつこいくらい話すようにしているし、各店でストアイベントを頻繁に開催しているのもその理由からです。

そのなかでもストアはお客様と直接会える大切な場所です。タオルに関する知識ももちろん大事なんですけど、想いの部分を特に伝えてほしいと言っています。

ナガオカさん:
D&DEPARTMENTのスタッフによく伝えていることは、自分の言葉で商品を伝えてほしいということです。そして、自分で使ったことのない商品は、お客さんにオススメしてはいけないと話しています。

だから、D&DEPARTMENTには現在1000を超えるアイテムが並んでいますが、僕もスタッフも自分が実際に使ったことがあるものばかりです。自分が使った感想をお客さんに伝えることを大切にしています。

これはイケウチさんでも一緒なのかなと思っています。「タオルを使って、洗濯を繰り返した後にどうなるのか?」ということを聞かれた時は、お店に置いてある洗濯機で実際に洗ったものをお客さんに差し出しながら説明されてると思うので。

なので、自分の言葉で語るということを大切にしていってほしいと考えています。

ーー 最後に、お越しいただいたみなさんへメッセージをお願いします。

池内代表:
2014年に社名が変わって、東京ストアをオープンさせた時は、「5年もお店を維持できるのかな…」と思いながら始めました。

ここのオーナーさんからも、「骨董通りで5年契約なんて、本気ですか?」と言われたりしましたが、「絶対に続ける覚悟で頑張りますから」と伝えたことを覚えています(笑)。

こうして5年間続けられたのは、みなさんが支えてくれたからで、本当に感謝しています。

今年は、自社ブランドを立ち上げてから20周年の節目でもあるので、これから色んなことが続いて行きます。

僕の頭の中では、20周年モデルのタオルの構想が完成しており、早くみなさんに見せられるように一生懸命に試行錯誤しているので、是非楽しみにしてください。

ーー ナガオカさんからは、IKEUCHI ORGANICへの期待のコメントをもらえると嬉しいです。

ナガオカさん:
やっぱりIKEUCHI ORGANICという名前の通り、テキスタイルメーカーという枠に縛られずに、オーガニックに関心を持っている人たちに緩やかに影響を与えるような存在になってもらえたらと思っています。

タオルの工場が食品の免許を取っているなんて、すごくユニークですよね。食品を作るような環境で、タオルをつくっている。そういう面白いものが、もっともっと染み出して行って、輪が広がっていく展開になったらいいなと思います。

これからも、IKEUCHI ORGANICというブランドを、みんなで見守って行きましょう。

ーー ナガオカさん、池内代表。ありがとうございました!

<執筆:井手桂司>

イケウチオーガニック

記事を書いた人

イケウチオーガニック

1953年創業、今治タオルの専門店IKEUCHI ORGANICのスタッフが、商品のご紹介や日々の洗濯、お手入れ、メンテンナンス方法などタオルのお役立ち情報のほか、オーガニックコットンの生産現場や今治本社工場での環境に配慮した取り組みなど、ものづくりの背景をコラムでご紹介しています。