CLICK

スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 #4REMEIへ25の質問

2017.04.28

目次

0324__remei_fq_01

2017年3月24日に開催された、「スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望」イベント終了後、REMEI社の取り組みについて、REMEI社の3名に参加者や主催のIKEUCHI ORGANICが用意した以下、6つのテーマ25の質問に、回答してもらいました。

回答者
REMEI.AG CEO Mr.Helmut Halker(ヘルムート氏)
bioRe India Ltd.CEO Mr. Vivek Rawal(ウィヴェク氏)
REMEI創始者 Mr.Patrick Hohmann(パトリック氏)

質問インデックス

1:現在のビジネスに至る背景
 Q1:学生時代、20代、30代にどんなことをしていましたか?
 Q2:ヘルムートさんが貧困層に関心をもったきっかけは何でしょうか?
 Q3:このようなソーシャルビジネスを始めたきっかけは何であったのでしょうか?
 Q4:1983年にREMEIを設立したきっかけは?

2:生産国・場所の選定について
 Q1:綿花栽培拠点としてインドとタンザニア、2ヶ国の農村を選んだ理由は?
 Q2:インドおよびタンザニアが綿花栽培に適しているか否かの調査にどれくらいの年月を要しましたか?。

3:遺伝子組換について
 Q1:遺伝子組み換えコットンの確認方法はどのような方法で行っていますか?
 Q2:その検査方法は公開され広く認知されている方法でしょうか?
 Q3:検査試薬などは容易に入手できますか?
 Q4:どのような遺伝子組み換えコットンを検出するものなのか?

4:ビジネスモデルについて
 Q1:量を拡大することと、エコシステムの質を維持することについての考え方について
 Q2:量を拡大する事と価格設定に関する考え方について
 Q3:現地貧困解消へのインパクトは、第三者的には具体的にどのように評価されているのか?
 Q4:物価の差があって成立しているコストの差を利用したビジネスはこれから先も持続可能と言えるのか?
 Q5:インドがより経済的成長を遂げ、どう持続可能な産業として成り立たせる予定なのか?
 Q6:現地の原材料生産者が製品を購入できる仕組みにするためにはどうすればいいと思うか?
 Q7:取引先を選ぶ場合、特別な条件・こだわりはあるか?

5:サスティナブルな取り組みについて
 Q1:オーガニックコットンをインドで栽培するためどのように伝え栽培を実現しているのでしょうか?
 Q2:自然災害などで全く生産できなかったとき、農家に対して何らかの保証があるのか?
 Q3:農業従事者への支援・教育にはお金がかかるが、資金はどのように調達しているのか?
 Q4:bioReの取組みを機能させるためには、年間でどのようなコストが必用なのか?
 Q5:毎年買い続ける事が重要と思うが、在庫増のリスクをどう回避しているのか?
 Q6:フェアトレードであれば第三者機関の認証が必用と思うが、取得しないのはなぜ?
 Q7:bioReでは転換後の農園を引き継ぐ等の支援を行っていますか?

6:IKEUCHI ORGANICについて
 Q1:REMEIから見てIKEUCHI ORGANICはどのような存在でしょうか?

0324__remei_fq_02

1:現在のビジネスに至る背景

Q1:ヘルムートさん、ヴィヴェクさんの人生観に興味を持ちました。学生時代、20代、30代にどんなことをしていましたか?

ヘルムート:私は、繊維工学の設計から始め、その後繊維技術者になりました。1980年から90年頃は急速にこの分野のビジネスが発展していました。7年間の経験を経て繊維業界分野で環境保護を特徴とする会社の製造責任者になりました。その会社はフィルターの材料を生産してました。結婚して、ふたりの子供を授かりました。家族生活を楽しみ、居住地域の社会活動にも参加してます。

ヴィヴェク:私はbioReプロジェクトの地域の中流家庭で育ちました。先祖は寺院の僧侶で、父は学校の教師でした。私は地域の公立学校で学び、その後インドールのカレッジで学びました。カレッジに通いながらインド・ラジオ放送のアナウンサーとして働きました。

科学科を卒業後は、社会運動と人材開発に関心があって、社会活動の専門家になる勉強をしました。2001年にはデリーのSOS子供ビレッジ入りました。私の地元に戻るまで4年間働き、しばらく経営学と法律の勉強もしました。

2005年にbioReの最初の社員として働き始め、2008年にはCEOになりました。家族は、結婚してふたりの子供がいます。私は、パトリック・ホフマンさんの意思に強く共感し、敬意を持ち、彼の築き上げたこのbioReプロジェクトの一員として働けることを大変誇りに感じています。

Q2:ヘルムートさんが貧困層に関心をもったきっかけは何でしょうか?

ヘルムート:私は特に貧困に興味があるということはありません。旅をして色々な国を尋ねると人々の異なる生活状況に目をみはることがあります。生まれたところや周りの環境で人は影響を受けます。人権は常に守られなくてはならないのですが、現実はそうとは限りません。パトリック・ホフマンさんの意思は人と自然に敬意を持つことが根本にあり、REMEI社とインド、タンザニアのふたつのプロジェクトの活動で具現化しています。私はこれに賛同して会社に加わりました。みんなが協力し合い、事業を立派に進めている様子には強い共感を持ち、今でも私の仕事を進める原動力になっています。

この姿勢は、私たちの事業に関わる農家から販売者まで全ての人々を勇気づけています。そして貧困と呼ばれる人々の生活の向上に役立っていると思います。

Q3:このようなソーシャルビジネスを始めたきっかけは何であったのでしょうか?

パトリック:私は社会改革の仕事と思って始めたわけではありません。インドの農民が農薬会社のために働かされていると云う不条理に気づいたところから始まりました。彼らは正当な利益を与えらることはありませんでした。政府の出すおこぼれのようなわずかな金額を手にするのが精一杯でした。全く承服でない状態で、それなら違った方法でこの状態を変えてやろうと決意しました。違った方法とは『オーガニック』だったわけです。そして、彼らの土俵の上で自ら取り組めるようにするのが良いと思いました。

当時の農民は、新たな農地を広げようにも、正当な対価が得られず、開拓することも生活基盤を改善する自由もないことを知りました。私たちは全面的にオーガニックビジネスにするか、または色々なビジネス要素を織り交ぜる方式で行くかを検討しました。結局、そのふたつの方法を両立することはできないと考えました。この時、従来のビジネスも残っていていわば小間物屋さんのように、雑多なものが沢山あるという状態でした。そこで重要なことは余計なビジネスは整理して健全な社会運動組織を作ることに集中することだと決断をしました。

Q4:1983年にREMEIを設立したきっかけは?

パトリック:最初、我々はごく単純な紡績糸の商社でした。独立した形をとるためREMEI社を立ち上げました。1990年にインドの何人かの農家の人たちの合意を得てからオーガニックコットンビジネスを始めました。私たちは農家の人々が現状でうまくいっていないので、オーガニック農業で行くと云う選択をしたわけです。インドのプロジェクトはその地域のインド人の会社が行なっていました。最初はその会社と事業を進めたのですが、1年目は散々な失敗に終わりました。この事業を辞めたいと思いました。

農家の人たちは、こちらのやり方がよくないと言ってきました。それなら皆んなで知恵を出し合って、改善して行こうと云うことになりました。試行錯誤の末、新しい方向が見えてきてそれに集中することにしました。1996年に生活基盤向上の支援基金を立ち上げました。農業の方法や買取価格の問題ばかりではなく、彼らの本当の問題は、衣食住の基本的な生活基盤の低さだったのです。2004年までに従来の慣行農業分野を完全に終わらせ、オーガニックに特化するように決断しました。そして同時にフェアトレード、エシカルな方針で固めるように方向を定めました。

一般に農家の人々はインドの会社に所属して、借金に縛られていました。そこで私たちはその債務を肩代わりして、私たちのプロジェクトに参加できるようにしました。すでに農家の人々とは信頼関係が十分にできていたので、こちらの施策に賛同し、ついてきてくれたのでした。

我々は重い責任を負うことになりました。益々、農家の人々との協働関係を築き、彼らの苦しい生活を改善することにしました。このようにインドとタンザニアの基金制度は機能していきました。私たちのやっていることが意義のあるものにするには、生産の効率を最大限に持ってゆき、しっかりとした利益が出るようにしなければ基金は維持できず、重い責任を感じています。

2:生産国・場所の選定について

Q1:綿花栽培拠点としてインドとタンザニア、2ヶ国の農村を選んだ理由(特に重視した点など)は?

パトリック:それはインドとタンザニアのパートナーが決めたことです。最初の設問は、オーガニックコットンとはそもそもなにか? その本質を把握することでした。次に彼らの作物を全量買い取る保証をすることを決めました。私たちは、このプロジェクトを全て支配する意図はありませんでした。農家の人々が主導で行くのが、私たちのためでもありました。ただし、一旦トラブルが起きた場合は、プロジェクトのスタッフが前面に出て対応し、基金の機能を生かしました。常日頃、注視すべきは、このbioReプロジェクトとbioRe基金の関係をそれぞれ自立させ、健全な経営を維持して行くことです。

Q2:インドおよびタンザニアが綿花栽培に適しているか否かの調査にどれくらいの年月を要しましたか?。

パトリック:時間は問題ではありません。私は全ての出来事は宿命的なものだと考えています。人種や生い立ちを超えて人間は、ひとつの課題に向かってひとつになれるものです。その課題が、正当で人間本来の要求である限り、何も変える必要はありません。この考え方は、普遍的なものです。

今日においてもプロジェクトは決して安泰ではなくギリギリのやりくりの中にいます。天候面では、不十分な雨には泣かされます。その他色々な問題は残っています。乗り越えるためには協力関係が一番で私たちにはその関係があります。あらゆる場面で、お互いが助け合って行かなければなりません。それぞれが尊重し合っていないと成り立たないということです。この意味で、意義のあるオーガニックでなくてはなりません。

そしてそれを買わなくてはなりません。
状況の変化にうまく対応してゆかなくてはなりません。
このオーガニック市場を拡大をさせてゆかなくてはなりません。
私たちのやり方に共感してくれる消費者の意向をよく見なければなりません。
農家の人々に信頼されるようにしなければなりません。
誰でも人の為になるように働かなくてはなりません。

あなた方の関心の高さがわかり嬉しく思います。

3:遺伝子組換について

Q1:遺伝子組み換えコットンの確認方法はどのような方法で行っていますか?

ヴィヴェク:bioReではGMO(遺伝子組み換え作物)の汚染検出テストは3段階で行われています。
種の段階、農家の段階そして製造工程での段階です。まず最初の種の検査は、信頼のおける種の会社から交配前の親世代の種の汚染を調べます。その後、その会社の畑にスタッフが出向き、交配の畑で葉からGMO汚染があるかどうかを確認します。種を仕入れる段階では、種のロットごとに遺伝子レベルの汚染テストPCR検査を行い、汚染のないことを確認してから買い入れています。

そして農家が収穫したコットンの買い入れの前に、スタッフが畑にゆき汚染の有無を確認します。収穫したコットンは、綿繰り工場に投入されますが、この時再度、検査されます。最後の検査は紡績工場に出荷される時に認証機関がコットンのベール(ロット)ごとのコットンサンプルを抜き取りスイスの検査所に送られて確認されます。ひとたび汚染が発覚すれば、どこで汚染が起きたかを遡り、違反者を特定します。製品は正規のオーガニックコットンから外されます。

以上のように製品にGMO汚染のコットンがないように検査を徹底しています。

Q2:その検査方法は公開され広く認知されている方法でしょうか?

ヴィヴェク:あなたの質問に対して汚染検査3段階方式の説明が正しい答えだったとし、さらに付け加えるなら、この方式はbioReインドが開発したもので、インドの他のプロジェクトがこの方式を研究しているところです。しかし、この方式を実行するためには高い意識がないと成り立たず、コストや効率を優先すると割に合わないとして、実際に取り入れているところはないようです。

Q3:検査試薬などは容易に入手できますか?

ヴィヴェク:その通り簡単に手に入ります。いくつかの会社から検査キットが入手できます。このキットは本来GMO種を扱う会社の為のものです。種の仲買い業者がGMOの種の不正販売をしたり、複製を作ったりするのをメーカーが取り締まる為に使われるももです。オーガニックコットンとは本来関係がない検査キットなのです。

Q4:どのような遺伝子組み換えコットンを検出するものなのか?

ヴィヴェク:インドでは(栽培されるコットンの)95%がGMO種です。だからこちらの栽培地はどこでもGMOコットンです。そんな訳でどれほど汚染のない純粋なコットンを供給することが難しいかです。また、これ程徹底した3段階検査方式が信頼の為に、本当に必要なことが理解されると思います。コットンは植物で花粉が交配してゆく訳で、花粉は風や昆虫が運びます。防ぎようがないと思われるでしょうが、そんな中で最大限の努力をしているのです。

4:ビジネスモデルについて

Q1:社会をよくする、社会に良い影響をあたえるためには、ボリュームの大きさがひとつの手段となるが、量を拡大することと、エコシステムの質を維持することについての考え方についてお聞きかせください

ヘルムート:エコシステムを維持するということは、自然の作用と資源をバランスを理解することです。オーガニック農業とは、大自然の作用に負うということで、その為に力のある土壌づくりが大事です。雨が降らない、害虫が出てきたなどの不利な状況に当たり前に対応して行かなければなりません。コミュニティの人々の社会性の意識は信頼感を高めることで成り立ちます。現在、bioReプロジェクトの地域の周辺には多くの慣行農業の人たちが沢山います。プロジェクトを拡大するには、この人々をオーガニック農業へ転換させることで可能です。まだまだ農業の改良課題はたくさんあり、効率化で量的な拡大は可能です。農民同士の工夫やbioReプロジェクトの種の品質向上を進めて、もう一段上を目指してゆきます。

bioReのスタッフ自体が育って、農家への有益なアドバイスができるようになっています。拡大は、ともすると資源を損ねることもありますが、bioReの農家は、環境保全と持続可能性の意義を理解して次の子供の世代が困らないように考えています。

Q2:上記と同様に、量を拡大する事と価格設定に関する考え方(量に比例して下げるか否か)についてもお聞きかせください

ヘルムート:私たちにはビジネスとしての競争力が必要です。競争力のある価格についても研究してきています。あくまでもフェアトレード、生産者の取り分はしっかりと確保した上での競争力でなければなりません。この質問の意味は、消費者も含めてこの事業で恩恵を受ける人々がうまく調和することと取れば、私たちが、日夜このことに腐心していることと言えます。

Q3:オーガニック・コットンの栽培により、現地(インド、タンザニア)貧困解消へのインパクトは、第三者的には具体的にどのように評価されているのか?

ヴィヴェク:オーガニック農業は、貧困撲滅のいい方法です。bioReの農家は最小の資源で、面倒な収穫物の有利な換金化ができるのです。というのは、一般的に農家の人々は十分な教育の機会がない為、中間業者の口車に乗せられ、農薬や肥料を買わせられ借金を抱えているのです。さらに農薬を扱う知識も十分に与えられないので、有害な農薬を身に浴びて、重大な病気に伏せることもあります。生産効率を考える余裕もなく気候変動の影響もまともに受けて、農作業の努力が報われません。

ひるがえってbioRe農家は、堆肥など農業に必要な投入物は自分で確保し、非GMOの種を使い相場の15%増しの価格で、コットンは持ち出す必要がなくプロジェクトが来てくれて回収してくれます。私たちの試算では、生産が15%下回った場合でも、慣行農業と比べて38%生産コストが低いので十分耐えられるはずです。bioReの農家は借金がないということで、貧困状態ではないことの証と言えます。健康状態が良い、土壌が豊か、生物多様性に富むなど有利なことが考えられます。

パトリック:私たちは農家の人たちがどのような状態かをいくつかの調査会社を使って調べました。オーガニック農業は、農家の資金運用がうまく行く良い事例になると結論づけました。これは気候不順による損害が出た時、持ちこたえられる力があることを示しています。

タンザニアの例では、オーガニック農業によって土壌が豊かになった為、家畜の生育がよく繁殖しています。これらの調査結果から、長年に亘って努力して来たこのプロジェクトはまさに当初から狙っていた効果が実現していることを示しています。

Q4:物価、人的コストが低いインドで生産し、欧米や日本で販売するビジネスモデルは、その物価の差があってこそ成立しているが、このコストの差を利用したビジネスはこれから先も持続可能と言えるのか?

それは本当に価格のギャップと言えますか? 日本や欧州でコットンは育つのですか? デイビット・リカルドの説によると、コストの比較の仕組みは、外的な取引(貿易)か海外でのビジネスから起こるとしています。欧州ではコットンが収穫できないだからインドやタンザニアからオーガニックコットンを輸入するというのが第一の理由です。インドやタンザニアの労働賃金は安い、しかしより有利に改善してゆくことはできます。自信を持って言えるのは、オーガニック製品を欧州や日本に安定供給できていることです。さらにインドやタンザニアのような国を増やしてゆきます。

Q5:インドがより経済的成長を遂げ、欧米と変わらなくなったときにはどのような生産環境を整え、持続可能な産業として成り立たせる予定なのか?

パトリック:bioReの仕組みは、方針の上に成り立っています。この方針いうのは、すべてのこのプロジェクトに関係する受益者の意向を反映するものです。そして方針は決して固定せず、時と場合において見直すべきものです。一緒に働き、より良い方向を共に目指す時、変化することにやぶさかではありません。

Q6:低コストの国で生産された原材料を用いて、先進国で加工した製品を流通させるビジネスモデルでは、現地の原材料生産者が製品を購入するには高価すぎて違和感がある。生産者も購入できる仕組みにするためにはどうすればいいと思うか?

パトリック:この質問は私へ向けてのものとして答えましょう。それは生産者に届けられるかどうかによります。誰がこの状態に責任を持てますか? 原則として現地の産業を活用すべきと考えています。もちろんその会社が、オーガニックの考え方を理解していることは前提です。またこの地域の消費者がこの製品に関心があることを願っていますが、実際にはほとんど興味がないのが事実です。いつでもスピードが要求され、オーガニック農業は難しく、しなければならないことが多くあリます。「望まなければ叶えられない」という大原則の元にあります。あなたの質問には、誰にでもできることは現地の人にもできなければならないというニュアンスがあります。残念ながらそのようにはいきません。

私たちの製品のTシャツをタンザニアの農家の人たちに渡しました。みんな気に入ってくれました。

Q7:取引先を選ぶ場合、特別な条件・こだわりはあるか?

ヘルムート:もちろん持続可能性の重要性を理解していないと取引は長続きしません。取引の希望者が私たちの品質の考え方を理解しないで基準を守らないということになれば取引はしません。私たちは常に取引の決め事には従いますし、問題があれば一緒に解決する努力を惜しみません。長い取引関係を持ちたいと思います。残念なことに関係が切れることになっても、私たちはそれまで最善の努力をするでしょう。

5:サスティナブルな取り組みについて

Q1:オーガニックコットンをインドで栽培するためには、実際に綿花の栽培をする現地スタッフに、その手間をかける意味や理由などを理解してもらう必要があり、簡単なことではないと思いますが、どのように伝え栽培を実現しているのでしょうか?

ヴィヴェク:時にそれは難しい問題です。でも究極的には、誰でもこの真実を知るべきです。オーガニック農業は、次世代が安心して生きて行けることまで考えて土壌を豊かにし、生物の多様性を維持し、気候変動に対処できる強い農業にし、安全で健康な農作物を食べられるというものです。農薬などなくても立派に農業で生きて来た先祖の行いを見直すよう農家の人々を勇気づけています。

農業技術の知識、子供達の健康を増進する指導、有利なお金の扱い方、私たちのうまくいった経験、失敗した経験を伝え、全体の調査の結果を知らせ、自立自尊の精神を持つよう導いています。例えばひとりの農家の人が来て、社会改善の仕組みを理解し、次世代のための土壌作りを理解し、必要と貪欲の違いを理解できたら、早速オーガニック農業の仲間として参加することを勧めます。特に勧誘をしなくても、沢山の農家の人たちが参加して短期間に目標に達することでしょう。離れて行くにしても大分、先のことになるでしょう。

Q2:自然災害などで全く生産できなかったとき、農家に対して何らかの保証があるのか?

ヴィヴェク:インド政府は、すべての農家に収穫できなかった時のための保険を用意しています。bioRe基金はもちろんそのような時は助けます。

Q3:持続可能なビジネスを展開する上で、農業従事者への支援・教育にはお金がかかるが、資金はどのように調達しているのか?

パトリック:その通り、支援や教育には大きな資金が必要です。私は支援を必要としている人々の手に私の意思を渡したいと思います。それでもそれは大きな金額になります。私たちはその資金を用意し、進歩のために捻出しなければなりません。価格が決定要因なら私たちは何も変えられません。

そのために私たちは信頼してくれる多くのパートナーたちに助けを求めます。価格がいくら? ということではなく、農場の仲間を単なる安いサプライヤーとしてではなく、我々のパートナーとして受入れられるようなリーズナブルな価格を認めてもらいます。

私のモットーは「私たちの協力は、人のため」ということです。

私はこれが環境を良くし社会をよくする原動力になると信じています。私たちはこれを実現してゆかなくてはなりません。

Q4:bioReの取組みを機能させるためには、年間でどのようなコストが必用なのか?

ヘルムート:すべての段階でコストが加算されてゆきます。

・農業
・15%の買取プレミアム
・農場アドバイザー
・農業指導訓練
・オーガニック認証
・フェアトレード認証
・GMO検査
・綿繰り工程
・他の原綿の混入を避けるため、オーガニック貸切で作業するコスト
・品質ごとのコットン保管にかかる倉庫料費用
・GOTS認証
・SA8000認証

Q5:毎年買い続ける事が重要と思うが、一定数の購入保証で、在庫増のリスクをどう回避しているのか?

ヘルムート:それはいつも調整に苦労する問題です。収穫が大きい時は、一般のオーガニックコットンの取引所に売ったり、さらに多い時は、慣行のコットン市場に出してしまいます。これはビジネス上の上乗せ利益と考えますが、時にはそれはお荷物と考えることもあります(保管の経費がかさむため)。加えて私たちはある量を保管します。これらは道具(手段)です。収穫が少ない時にこの余剰コットンを使います。収穫量は自分たちが、糸にし洋服にするための原料の量より多いのが通常です。これまでに原料不足に陥ったことはありません。

Q6:フェアトレードであれば第三者機関の認証が必用と思うが、取得しないのはなぜか。また今後取得の予定はあるか?

ヘルムート:人間の尊厳と環境保全がREMEI社の存在意義です。認証の工程については私たちは評価認定の道具と見ています。その為REMEI社は認証に頼ることはしません。

・bioRe
・買い入れの保証
・プレミアム
・無償の訓練
・農業指導アドバイザーの派遣
・無利子の貸付

bioReはFLO-Certと共にbioRe独自の認証を作り上げました。基準の評価認定として、FLO-Certは毎年インド、タンザニアの認定検査を行っています。そして製品のサプライチェーンではGOTSとSA8000の認証を取得しています。

Q7:通常綿からオーガニックに転換する間の3年間を支援する取り組みとして「プレオーガニックコットン」がありますが、bioReでは転換後の農園を引き継ぐ等の支援を行っていますか?

パトリック:私たちの主張にプレオーガニックはありません。プレオーガニックの期間は単に農地の拡大を狙ったものです。オーガニックの状態まで達すると、私たちのプロジェクトに加入して5年間の買い付け保証の恩恵に浴し、長期の協力関係を作ってゆくことがきます。彼らが私たちの条件を満たしていることを確認したら、こちらのノウハウを授け、また彼らが有用な知識があれば取り入れ、他の農家の人々に伝えて広げてゆきます。このように試しの期間があって本当に私たちの方式に賛同し、従ってくれれば、正式なパートナーとして遇します。

6:IKEUCHI ORGANICについて

Q1:REMEIから見てIKEUCHI ORGANICはどのような存在でしょうか?

ヘルムート:IKEUCHI ORGANICは素晴らしいパートナーです。IKEUCHIはREMEIとbioReの近しいパートナーであり、日本の産地生産を結びつけました。そのbioReとのパートナーシップは、オーガニック農場への責任を共有したということであります。共に持続可能性を求める事業であります。

加えて、IKEUCHI ORGANICはbioReの社会活動への寄贈を行う会社です。農家の人々への福祉に、人材育成、そして社会基盤向上をビジネスに取り入れるということです。私たちは日本の産地の会社がが加わってくれて大変うれしく思います。IKEUCHI ORGANICはこの度、国際的な資源を活用し、日本の産地の特性を生かし、省資源に努めています。いつでもビジネスを進めることは、ひとつのチャレンジであり、将来新しい市場のトップリーダーになると信じています。

セミナーでは、オーガニック製品へ熱心に取り組む様子がわかりました。そしてその方法が持続可能性の有効な方法であることが理解できました。

私は、大変前向きな気持ちになりました。

関連リンク
スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 #1
REMEI社CEOヘルムート氏 プレゼンテーション

スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 #2
bioRe India CEOヴィヴェク氏 プレゼンテーション

スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 #3
阿部社長からヘルムート氏、ヴィヴェク氏に質問