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Vol.31
矛盾が少ない会社で働くということ(前編)
連載企画「イケウチのヒト」の最後を飾るのは、今年の6月に代表取締役社長に就任した阿部さん。7年前にアルバイトで入社してからは、営業の責任者として小売店への営業や法人営業、ストア・WEBの直販店を統括しています。タオルソムリエとしても、“洗濯おじさん”と自称するほど洗濯にこだわり、勤務先の東京ストアにはお客様が相談に来ることも度々あります。前編では入社のきっかけから、洗濯の話、製品に託す想いなど、社長就任前の3月にお話を聞きました。
代表取締役阿部
アルバイト出身の新社長
――阿部さんがIKEUCHI ORGANIC(池内タオル・当時)に入社したのはいつ頃ですか?
2008年にアルバイトから入って、正社員になったのは、2009年5月からですね。
――え? アルバイトで入社だったんですか?
そうです。最初は展示会の手伝いをしていました。(入社前の)当時僕が勤めていた会社の常務、その大先輩が池内代表で、常務に「面白い会社があるけど阿部さん行く?」と言われて。そのとき就職活動を始めようとしていたときで、「どんな会社ですか?」と聞いたら、面白そうだったので、まず展示会から(お手伝いを)始めましょうと。12月にエコプロダクツ(※1)を手伝って、2月にギフトショーをやりました。
廃番なし、値引きなしの販売戦略
――お手伝いを通じて、池内タオルのどんな点に魅力を感じましたか?
アパレル業界で働いていたときに、必ずしもいいなぁと思っているのが売れるかというと、そうではなくて、セールに向けたモノづくりをしないといけなかった。「こんなに売れないよね」と思っても量を積まないと売れていかないから。アパレルの世界は仕入れ年度が古ければ古いほど価値が下がっていくんですよ。だからモノとしてきちんと成立しているのに価値は下がる、それってどうなんだろう? って思って。でもIKEUCHI ORGANICの考え方は基本的に商品を一度発売したら永久定番だし、値引きもしないし、自分たちの考えている理想のモノづくりを愚直にしているから、自分の中では矛盾が一番少ない。
――日本仕事百貨の取材(該当記事はこちら※外部サイト)でも言っていた「ここでしか働けない」というところにつながりますね。
選択肢は(他にも)あったんだけど、どうせ同じところで壁にぶち当たるなら、全然違うところで違う方向にいったほうがいいなぁと。
社会で起きる矛盾から背を向けず、ぶち当たっていく
――実際に仕事をしてみて、矛盾は全くなかったですか?
倫理的、道徳的矛盾はすごく少ないと思います。事業を成長させるために、これからやっていかないといけないことに対しては、何らかしらの矛盾は出てくるだろうと思っているけど、そこは社会の仕組みが変わらないとダメだと思うので。今の経済的仕組みはどこかのタイミングで変わるのかなぁと。絶対にどこかに矛盾がきて壁がくる。ウチはそこから目を背けないで、そこにぶち当たることしかやっていないから、コンフリクト(衝突・葛藤)はあるけど改善していくことによって売上は伸びていくのかなと。ほんとはこうしないといけないのにな、と思って抑えてやることは、限りなく少ないと思います。
――確かにそうですね。経済的新自由主義の閉塞感など、社会全体が曲がり角に立っている感じはあります。
他の会社だと、原価の構造がこうだから利益を出すためにどうしても(大量に)作らないといけないとかあるじゃないですか。そうすると結局、誰かのところにしわ寄せがきて。それをウチの会社だとリアルに見られるから。大きな会社だと販売は販売、企画は企画と分断されていて、全てのサプライチェーン(※2)が見えないけど、IKEUCHI ORGANICはすべてが見える状況で働けるので、そこは決定的に違うんだろうなと思います。
“洗濯おじさん”洗濯を語る
――話は変わりますが、阿部さんは洗濯好きですよね。洗濯にハマったのはどういうきっかけがあって、それをどう仕事に活かしているのでしょうか?
一番驚いたのは、(タオルの風合いが)水によって変わるってことです。地域によって違うし、家の水道管の劣化具合によっても違うだろうし。これがいいですよというベストな選択肢がないわけですよ。皆これがベストですという幻想で動いているから、洗濯も幻想だなって思って。それだったら色々実験してこんな事例がありますよ、というのはお伝えはできるけど、これがベストだよっていう伝え方は危険です。そのためには引き出し(事例)が多ければ多いほど皆さんのお役に立てるのかなと。
――まだまだ研究は尽きないという感じですね。
まだまだ。これエンドレスですよ。数えきれない洗剤の種類があって、全部なんて無理じゃないですか。こんな問題があったよということに対し、ソリューション(解決方法)じゃないけど、自分たちの事例をお話するくらいのことしかできないから。作り手としてそれってやっていくべきじゃないかな、やっていて面白いし。実験が好きなんですよ。結局今いろんな情報が乱立していて、自分の肚に落とし込んでいかないと語れないです。
製品(モノ)がどうしようもなかったらダメ
――洗濯のことだけじゃなく、うちの会社の指針もそうですよね。考えを人に押し付けない。
そう、うちはオーガニックだからとか、環境にこだわってものづくりをしているとか製品(モノ)で語るべきなので。製品の性能で。それはね、池内代表が口をすっぱくして言ってるけどモノありきなので。そのモノがどうしようもなかったら、ダメなんです。今、池内代表が前面に立っていて社会貢献だったり、取り組みのことがクローズアップされてそこに対して講演の依頼はありますけど、必ず言っているのは製品のことなので。
製品がないことには、こういうストーリーもなかったりするから。製品としての基礎がしっかりしていないと。それを求めた結果が、『最大限の安全と最小限の環境負荷』で、どっちかと言ったら『最小限の環境負荷』を追及することによって、『最大限の安全』も追及したかたち、結果的には。
後編(8月12日公開予定)につづく
インタビュー2016年3月
取材・文/牟田口・神尾
フォトグラファー/木村 雄司(木村写真事務所)
注釈
※1:1999年より開催されている、一般社団法人産業環境管理協会・日本経済新聞社が主催の環境にやさしい製品、サービスに関する展示会 参考サイト:エコプロ公式サイトhttp://eco-pro.com/
※2:製品の原材料調達から製造、流通、販売、消費者へ渡るまですべての流れのこと。